大判例

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東京地方裁判所 昭和24年(ワ)262号・昭23年(ワ)328号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(事実)原告等が郵便局に郵送を委託した布帛類が郵送中、郵便局職員と郵便局のため自動車による郵便物運送を請負つている被告会社の従業員の共謀によつて窃取され亡失したから、民法第七百十五条の規定により加害者の使用者たる被告国に対し亡失物の時価相当の損害の賠償を求めた。(他の被告に対する請求原因は省略)被告国はかかる場合には郵便法の規定で処理すべきで民法の適用はないと争つた。

(判断)原告敗訴。

判決はつぎのように述べている。即ち、

「郵便物の取扱に関し差出人に生じた損害につき郵便官署がなす賠償は旧郵便法(明治三十三年法律第五十四号)の下にあつては同法第三十三条以下及び郵便規則第八十九条の規定に現行郵便法(昭和二十二年法律第百六十五号)の下にあつては同法第六十八条以下の規定によるべきであつて、民法債務不履行又は不法行為の規定の適用なきものと解するのが相当である。(昭和二年十一月十七日言渡大審院同年(オ)第八五五号損害賠償請求事件判決、民集六卷六〇九頁参照)したがつて、郵便物の亡失による損害の賠償を国に対して不法行為にもとずいて求める原告等の本訴請求は事実の確定をするまでもなく理由なく、失当である。」

なお、この点について被告国はその答弁において民法の適用のない理由をつぎのように述べている。即ち、「郵便事業は国の公企業であつて国が直接社会公共の福祉を増進することを目的として経営する非権力的な事業である。従つて国と利用者である一公衆との間の法律関係は原則として、私法関係であるが、郵便事業における利用関係は、民法上の普通契約と異りいわゆる附合契約に属すべきものである。しかもその事業は厖大な設備と経費とを要することから、我国ではこれを国の独占事業とし、国は事業者として、一般的且継続的な設備及び労務を提供して一定の条件の下にこの事業の経営に当つているのであつて、これを利用する者は必ずその条件に従わなければならないと共に、その条件に従つた利用は業事者においてもこれを拒絶することは許されない。この範囲においては契約自由の原則に存在しない。そして利用のための一定条件は画一的定型的であり、しかもそれは企業者である国が国会の議決を經て決定するもので利用者である一般公衆はこれに附従する外はないのである。郵便法はこの目的に副うためその利用関係を定めたものであつて、利用者はその利用にあたつて規定の内容を知悉すると否とにかかわらず、予め国が定める条項に従つて契約を締結する意図を有するものと看做される。従つて郵便官署の郵便物取扱に際して生ずる法律関係については郵便法の規定は、一般私法に対して特別法の関係に立つ、郵便法第六十八条第一項第一号によれば、逓信大臣は書留又は保険扱とした郵便物の全部若は一部を亡失し又は毀損したときは、その損害の賠償の責に任ずべきものとし同条第二項第一号において書留郵便物の賠償額の限度を百円と定めている。ここに亡失とは郵便官署の従業員の過失に基く喪失は勿論、郵便局員又は集配人のような従業員が郵便物を窃取した場合をも包含するものと解すべきである。郵便事業を国の独占事業にし乍ら、他方において郵便物亡失の場合における賠償責任の限度を一律に百円としているのは余りにも利用者の利益を軽視するものとの諦を免がれないけれども、郵便法は別に保険扱の制度を設け賠償責任の範囲を第六十八条第二項第二号によつて要償額の全部としており、この手続をとつた利用者に対しては十分な損害補填の途を拓いている。したがつて郵便利用から生じた損害の賠償については民法債務不履行又は不法行為の規定の適用なく、郵便法の右規定によるべきである。」

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